南アジア・東アジアは、暗号通貨送金における「規制・高コスト・禁止のグレーゾーン」が最も色濃く出る地域です。
Chainalysisの採用指数で世界1位の常連であるインドですら、利益への一律30%課税と全譲渡への1%TDS(源泉徴収)が立ちはだかり、「合法だが実質的に割に合わない」状況が続いています。韓国は合法かつインフラも整っていますが、実名銀行口座制度が外国人には高い壁となります。そして中国とネパールは全面禁止——現金化はそもそも非合法です。
本ページでは、インド・韓国・中国・台湾・ネパールについて、規制状況、課税、現金化の可否、ツーリスト視点での現実度を国別に整理します。本特集の他地域とは異なり、このページの基本トーンは「回避・要注意」です。当サイトは匿名・非合法な現金化手段を一切推奨しません。数値・制度は2026年6月時点のもので、各セクション末尾に情報源を明記しています。
まず結論:各国の規制ステータス一覧
| 国 | 法的位置づけ | 最大の障壁 | 外国人・旅行者 |
|---|---|---|---|
| 🇮🇳 インド | 合法(VDA規制) | 30%課税+1%TDS+GST、損失通算不可 | PAN等の現地KYCが前提で非現実的 |
| 🇰🇷 韓国 | 合法(厳格規制) | 提携銀行の実名口座が必須 | ARC(外国人登録証)なしでは事実上不可 |
| 🇨🇳 中国 | 全面禁止 | 取引・マイニング・海外取引所利用すべて違法 | 現金化は非合法。香港のみ別枠で合法 |
| 🇹🇼 台湾 | 合法(AML登録制) | 登録VASP経由+台湾の銀行口座 | 口座開設の壁が高く現実的でない |
| 🇳🇵 ネパール | 全面禁止 | 取引自体が違法 | 現金化は非合法 |
インド
● 条件付き(合法だが高コスト)インドは Chainalysis の Global Crypto Adoption Index で2023年・2024年と2年連続の世界1位を記録した、草の根採用の巨大市場です。暗号資産(VDA:Virtual Digital Asset)の保有・取引は合法で、WazirX / CoinDCX / CoinSwitch / ZebPay といった国内取引所でUSDT等を売却し、INR(ルピー)を銀行口座へ出金できます。しかし問題は、世界でも類を見ない重い課税スキームです。[1]
規制と課税:30%+1%TDS+GSTの三重構造
2022年導入の税制が2026年現在もそのまま維持されています。2026年2月のUnion Budgetでも暗号資産への言及はなく、緩和の見通しは立っていません。[2]
- 利益への一律30%課税(Section 115BBH。サーチャージ+4%のセス別途)[1]
- 全譲渡への1%TDS(Section 194S。₹10,000超の取引が対象、利益の有無に関係なく売却額から源泉徴収)[2]
- 2025年7月からプラットフォーム手数料にGSTが上乗せ[3]
- 損失の通算・繰越は一切不可。暗号資産同士の交換(例:ETH→SOL)も課税対象の「譲渡」[1]
- 確定申告では Schedule VDA での開示が必須[3]
受取側がUSDTをINRに換える時点で、売却額の1%が利益の有無に関わらず源泉徴収され(国内取引所が自動控除)、さらに為替差等で利益が出ていればその30%が課税されます。損失が出ても他の所得と通算できません。つまり「送金手数料1〜2.5%」というステーブルコイン送金の優位性は、インドでは税負担で容易に消し飛びます。実際、1%TDS導入後(2022年2月〜2024年1月)に国内取引所の出来高は約97%減少し、取引の多くがオフショアへ移行しました。[4] なお、FIU-IND(金融情報機関)はオフショア取引所にも登録を要求しており、「海外取引所なら課税逃れできる」という考えは通用しません。[3]
現金化の可否
国内取引所(WazirX / CoinDCX / CoinSwitch / ZebPay)でUSDT→INRを売却し、銀行口座へ出金するのが正規ルートです。TDSは取引所が自動で控除するため手続自体は簡単ですが、P2P取引では買い手側にTDSの控除・納付義務が生じるという複雑さがあります。[2]
ツーリスト視点
国内取引所のKYCはPAN(納税者番号)等の現地書類が前提で、短期滞在の旅行者には事実上利用できません。インドへの送金は、受取側(現地居住者)が税負担を許容できる場合に限り選択肢となります。送金目的なら、税負担のないWise等の従来型送金サービスとの比較を必ず行ってください。
出典(インド)
- ClearTax「Taxation On Cryptocurrency: Guide To Crypto Taxes In India 2026」 cleartax.in / Koinly「Crypto Taxes India: Expert Guide 2026」 koinly.io
- CoinDCX「Crypto Tax in India: Complete Guide (2026)」 coindcx.com
- India Policy Hub「Crypto Tax India (2026): 30% VDA Tax, 1% TDS & ITR Guide」 indiapolicyhub.in
- FinancialContent「India's Crypto Conundrum: Navigating the Taxed Yet Unregulated Digital Frontier」 markets.financialcontent.com
韓国
● 条件付き(合法だが厳格)韓国は世界有数の暗号通貨取引大国で、規制も整備されています。しかしその規制の中核である「実名銀行口座制度」が、外国人にとって最大の壁です。特定金融情報法(Act on Reporting and Using Specified Financial Transaction Information)に基づくVASP制度の下、Upbit / Bithumb / Coinone / Korbit の主要4取引所(+Gopax)だけが銀行と実名確認口座の提携を結んで稼働しており、入出金はこの提携銀行の本人名義口座経由に限定されます。[1]
規制:実名口座制とトラベルルール
提携関係は Upbit=K-Bank、Bithumb=KB国民銀行(2025年3月にNH農協銀行から移行)、Coinone=カカオバンク、Korbit=新韓銀行。取引所間・ウォレットへの送金にはトラベルルール(送金者情報の通知義務)が適用され、匿名性は徹底的に排除されています。[2]
外国人・ツーリスト視点
外国人がこれらの取引所を使うには、ARC(外国人登録証)と提携銀行の実名口座が必要です。韓国の銀行は非居住者にこの種の口座をほぼ開設しないため、ARCを持たない観光客・短期滞在者は事実上利用できません。[3] 従来は外国人のトレーディング自体が実名口座要件で制限されてきた経緯があり、当局は外国人アクセスの扱いを継続的に検討していますが、2026年6月時点で旅行者に開かれた正規ルートはありません。
受取側が韓国居住者(ARC保有の長期滞在者を含む)なら、本人の実名口座経由で合法的に現金化できます。逆に旅行者が「自分のUSDTを韓国で現金化する」ことはほぼ不可能で、クリプトデビットカード(類型⑤)での代替が唯一の現実的選択肢です。キムプレ(キムチプレミアム)を狙った持ち込み売却は、外為法・資金洗浄規制に抵触するリスクがあり推奨しません。
出典(韓国)
- FSC(韓国金融委員会)プレスリリース fsc.go.kr / Verdict「South Korea Exchanges」 verdict.co.uk
- Sumsub「Crypto Regulations in South Korea」 sumsub.com
- KR Insider「How to Open a Korean Stock & Crypto Trading Account as a Foreigner (2026)」 krinsider.com
中国
● 回避(全面禁止)中国本土では、2021年9月の人民銀行(PBOC)等10機関による通知で、暗号通貨関連業務は包括的に「違法な金融活動」と位置づけられました。法定通貨との交換、暗号通貨同士の交換、デリバティブ取引、マイニングのすべてが禁止対象です。[1]
規制:海外取引所経由も違法
この通知の重要な点は、海外取引所がインターネット経由で中国居住者にサービスを提供すること自体を違法と明記したことです。海外取引所のために働く中国国内の従業員や、これらにサービスを提供する企業・個人も法的責任を問われます。[2] 人民銀行は2025年以降も禁止方針を再確認しており、ステーブルコインのリスクにも繰り返し言及しています。[3]
現金化の可否とツーリスト視点
中国本土での現金化は非合法であり、本特集は一切推奨しません。地下のOTC・P2P市場は存在するとされますが、資金洗浄関連の摘発対象であり、口座凍結や刑事リスクを伴います。中国への送金は銀行送金・Wise・Western Union等の従来型サービスを使ってください。
香港は本土とは異なる法域で、取引所ライセンス制度やステーブルコイン条例を整備した合法・規制化路線を採っています。HashKey等のSFC認可取引所が稼働しており、香港経由の合法的な選択肢は存在します(ただし本土居住者の利用は本土法の制約を受けます)。[3]
出典(中国)
- Library of Congress「China: Central Bank Issues New Regulatory Document on Cryptocurrency Trading」 loc.gov
- Baker McKenzie「China's Central Bank Declares All Cryptocurrency Transactions Illegal」 blockchain.bakermckenzie.com
- The Block「China's central bank reaffirms crypto ban, flags stablecoin risks」 theblock.co
台湾
● 条件付き(合法・AML規制下)台湾では暗号通貨の保有・取引は合法で、金融監督委員会(FSC)の下でAML登録制が敷かれています。2024年7月改正のAML法により、VASPは営業前にFSCへのAML登録が義務化され(2025年1月全面適用)、未登録営業には最長2年の懲役または最大500万台湾ドルの罰金が科されます。オフショア業者も台湾で営業するには現地法人・支店の設立と登録が必要です。[1]
現金化の可否
最大手の MaiCoin / MAX(同グループ)でUSDT等→TWDを売却し、台湾の銀行口座へ出金するのが正規ルートです。FSCは登録VASPへの監督を強めており、MaiCoinやBitoProがAML違反で過料を受けた事例もあります。専用法(VASP法)の制定やTWD建てステーブルコインの枠組み整備も進行中で、規制は今後さらに具体化する見込みです。[2]
ツーリスト視点
出金には台湾の銀行口座が前提で、外国人の口座開設には居留証等が求められるため、短期の旅行者には現実的ではありません。店頭OTCなど旅行者向けの現金化インフラに関する公開情報も限られており(情報やや限定的)、台湾ではクリプトデビットカードの併用が無難です。
出典(台湾)
- Global Legal Insights「Blockchain & Cryptocurrency Laws & Regulations 2026 | Taiwan」 globallegalinsights.com
- The Block「Taiwan fast-tracks stricter crypto AML rules」 theblock.co / MaiCoin公式 maicoin.com
ネパール(補足)
● 回避(全面禁止)ネパールでは暗号通貨の取引が全面的に禁止されています。ネパール中央銀行(Nepal Rastra Bank)が外国為替規制法等に基づき暗号通貨の取引・利用を違法と明確化しており、現金化は非合法です。在外労働者からの送金が経済の柱である国ですが、暗号通貨ルートは選択肢になりません。送金には銀行送金や認可送金事業者(MTO)を使ってください。[1]
出典(ネパール)
- Nepal Rastra Bank(ネパール中央銀行) nrb.org.np / Cloudwards「Where Is Crypto Illegal?」 cloudwards.net
中国・ネパールのような禁止国では、地下P2PやOTCといった「抜け道」が語られることがありますが、当サイトはこれらを一切推奨しません。資金喪失・口座凍結・刑事責任のリスクがあるだけでなく、相手国の法令違反は在留資格や入国にも影響し得ます。禁止国・高規制国への送金は、銀行送金・Wise・Western Union等の合法的な従来手段を選んでください。
南アジア・東アジア 国別早見表
| 国 | 推奨度 | 最適ルート | 現金 | 総コスト目安 |
|---|---|---|---|---|
| 🇮🇳 インド | 条件付き | 国内取引所(WazirX/CoinDCX等)→銀行出金 | △ | 手数料+30%課税+1%TDS |
| 🇰🇷 韓国 | 条件付き | 4大取引所→提携銀行実名口座(要ARC) | △ | 1%未満(口座があれば) |
| 🇨🇳 中国 | 回避 | なし(従来送金を使用) | × | — |
| 🇹🇼 台湾 | 条件付き | MaiCoin/MAX→銀行出金(要現地口座) | △ | 1〜3% |
| 🇳🇵 ネパール | 回避 | なし(銀行・MTOを使用) | × | — |