ホーチミン市への送金が3カ月で28億ドル超、変わる流れ
ニュースの概要
ベトナム最大の都市ホーチミン市に、2026年7月から9月の3カ月間で28億米ドルを超える海外送金が流れ込みました。特徴は、送金元としてアジア各国からの比率が高まっている点です。従来はアメリカなど欧米在住のベトナム系住民からの仕送りが主役でした。しかし近年は、日本や韓国、台湾などで働く技能実習生や特定技能の労働者、さらに域内企業の支払いも加わっています。年換算では110億ドル規模となり、都市経済を支える大きな資金源です。送金は家計の消費だけでなく、住宅購入や起業資金にも回っています。
引用元: ホーチミン市への海外送金、2026年7~9月は28億USD超 アジアからの流入が拡大(https://access-online.net/)
分析・見解
欧米の仕送りからアジアの稼ぎ手へ変わる送金元
これまでベトナムへの送金といえば、アメリカやオーストラリアに暮らす家族からの仕送りが代表的でした。金額は大きい一方、送り手の数は限られていました。
今回の数字で目を引くのは、アジアからの流入が広がっていることです。日本には2025年末時点で60万人を超えるベトナム人が暮らしており、国別では中国に次ぐ規模です。韓国や台湾にも多くの労働者がいます。1人あたりの送金額は小さくても、人数が多いため合計は大きくなります。送金の担い手が少数の富裕層から、働く世代の広い層へ移ってきたと言えます。
3カ月で28億ドルという規模をどう読むか
28億ドルを年に直すと約110億ドルです。ベトナム全体の海外送金は近年、年160億〜190億ドル前後で推移してきました。その過半がホーチミン市に集まる計算です。
フィリピンの場合、送金額は国内総生産(GDP)の約9%に相当します。ベトナムは約4%で、まだ伸びしろがあります。ただし送金への依存が強まると、送り出し国の景気や為替の影響を受けやすくなります。日本の円安が進むと、同じ給料でもドル換算では目減りします。そのため送金額は、為替の動きと切り離して見られません。
銀行から携帯アプリへ進む送金手段の移行
送金の手段も変わっています。以前は銀行の窓口や現金受け渡しの業者が中心でした。今はスマートフォンのアプリで、数分から数時間で着金するサービスが増えています。
ベトナムでは、QRコードによる銀行間の即時振込が広く普及しました。受け取り側は、口座番号を入力せず、画面を読み取るだけで済みます。送る側のアプリと受け取る側の口座がつながれば、中間の手数料は大きく下がります。世界銀行の集計では、200ドルを送る平均コストは約6%です。国連が掲げる目標は3%以下であり、アジア域内の送金網は、その目標に近づく有力な舞台です。
非公式ルートの縮小が数字を押し上げている可能性
近年は、非公式の送金業者(=銀行を通さず現金や口座間で相殺する業者)から、正規のルートへ移る動きもあります。法令の締め付けと、公式サービスの使いやすさが理由です。
つまり、統計上の増加の一部は「実際に増えた」のではなく、「これまで見えなかった送金が見えるようになった」結果かもしれません。数字を読むときは、この点を頭に置いておくべきです。
ビジネスへの影響
送金サービスを選ぶ側の見直しポイント
外国人材を雇う企業は、給与の振込先と送金の仕組みを見直す余地があります。従業員が毎月母国へ送金している場合、手数料と為替差で月に数千円を失うこともあります。社内で提携先の比較表を共有するだけでも、定着率の向上につながります。
比べるべきは、手数料の表示額だけではありません。実際に相手の口座へ着く金額、着金までの時間、為替レートの上乗せ幅を確認します。上乗せ幅は、表に出にくい費用だからです。
ベトナム向けの商売を考える企業への示唆
ホーチミン市に流れ込む資金は、消費を押し上げます。家電、住宅設備、教育サービス、保険などが、送金を受けた家庭の支出先になります。日本の小売や教育事業者にとって、送り出し側の労働者と受け取り側の家族を、一つの顧客層として捉える発想が有効です。
一方、事業者が送金業そのものに参入する場合は、資金移動業の登録(=国に認められた送金事業者になるための手続き)が必要です。本人確認や不正送金対策の費用もかかります。自前で作るより、既存の事業者と組む方が現実的でしょう。