ベトナム、外国の信用機関による国内口座の国際送金利用を容認へ――規制緩和の背景と実務への影響

ベトナムの国際送金規制緩和のイメージ。外国の信用機関による国内口座の国際送金利用を認める提案を象徴する図

ニュースの概要――何が変わろうとしているのか

ベトナムで、外国の信用機関(外国銀行など海外に拠点を置く金融機関)が、ベトナム国内に開設した口座を国際送金の経路として利用することを認める提案が示された。ベトナムは従来、外貨管理に関する規制が厳しく、外国金融機関が国内口座を通じてクロスボーダーの資金移動を行うことには強い制約が課されてきた。今回の提案は、その制約を一部緩和し、海外からベトナムへ、あるいはベトナムから海外への送金ルートを多様化しようとするものだ。

現時点では提案段階であり、最終的な制度の細部や施行時期は確定していない。ただし、外国金融機関が現地口座を送金のハブとして使えるようになれば、コルレス銀行(中継銀行)を何段も経由する従来型のSWIFTネットワーク経由の送金に比べ、経路の短縮とコスト削減につながる可能性がある。海外送金の基本的な仕組みや用語は、当サイトの用語集でも解説している。

規制緩和の背景――送金受取大国ベトナムの事情

ベトナムは、海外で働く労働者からの母国送金(ワーカーズ・レミッタンス)が経済を支える重要な資金フローとなっている国の一つで、世界銀行の統計でも有数の送金受取国として位置づけられてきた。日本にも技能実習や特定技能の在留資格で働くベトナム人労働者が多数おり、日本発の対ベトナム送金は個人送金の中でも存在感が大きい。

一方で、国際送金のコストは依然として高止まりしている。世界銀行が運営する送金価格データベース(Remittance Prices Worldwide)によれば、世界平均の送金コストは送金額の6%前後で推移しており、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「3%未満」の目標にはまだ距離がある。送金コストの引き下げには、送金経路の競争促進が不可欠であり、外国金融機関に国内口座の利用を開放するベトナムの提案は、この流れに沿った規制緩和と読むことができる。海外の制度・市場動向の一次情報としては、JETRO(日本貿易振興機構)がベトナムの金融規制に関する調査情報を継続的に発信しており、企業実務の参考になる。

海外送金業界への影響――銀行・フィンテックの競争構図

今回の提案が実現した場合、まず影響を受けるのは従来型の銀行送金だ。銀行経由の国際送金は、送金銀行・中継銀行・受取銀行のそれぞれで手数料が発生し、着金までに数営業日を要することが珍しくない。外国の信用機関がベトナム国内口座を直接使えるようになれば、中継段階が減り、銀行間送金の所要時間と総コストの圧縮が期待できる。

次に、Wise(旧TransferWise)やRevolut、PayPalといったノンバンク系の送金・決済サービスへの影響である。これらの事業者は、各国に保有する現地口座間で資金を付け替える「ローカル口座方式」によって、実質的に国境をまたがない送金を実現し、銀行よりも低い手数料と為替レートの透明性を武器にシェアを伸ばしてきた。たとえばWiseは手数料を送金前に明示し、為替レートに上乗せ(スプレッド)をしない方針を採ることで知られる。ベトナムが外国金融機関への口座開放を進めれば、こうしたフィンテック事業者が現地での足場を築きやすくなり、対ベトナム送金の選択肢と価格競争はさらに広がるだろう。

もっとも、規制緩和は同時に、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)の負担増も意味する。送金経路が多様化するほど、資金の流れを追跡する当局側・事業者側の体制整備が問われることになり、本人確認(KYC)や取引モニタリングの実務は一段と重要になる。

日本からベトナムへ送金する際の実務ポイント

日本からベトナムへ送金する場合、利用できるのは大きく分けて「銀行の外国送金」と「資金移動業者の送金サービス」の2系統である。資金移動業者とは、資金決済法に基づき金融庁に登録した銀行以外の送金事業者を指し、Wiseの日本法人やSBIレミット、Western Unionと提携する国内事業者などがこれに該当する。資金決済法の2021年改正以降、資金移動業は取扱額に応じて第一種から第三種までの類型に分かれており、一般的な個人送金で広く使われる第二種資金移動業では1回あたり100万円相当額以下という上限がある。高額の送金は銀行送金が前提になる点に注意したい。

また、国際送金には外国為替及び外国貿易法(外為法)が適用され、一定額を超える対外支払いには報告義務が課されるほか、経済制裁対象との取引は禁止される。制度の詳細は財務省が所管している。さらに、犯罪収益移転防止法に基づき、送金時には運転免許証や在留カードなどによる本人確認が必須であり、送金目的や資金の原資を確認されることもある。これは利用者を疑うための手続きではなく、送金インフラ全体の信頼性を保つための仕組みである。

実務上の確認手順としては、(1)利用するサービスが金融庁の免許・登録一覧に掲載された事業者かを確認する、(2)送金手数料だけでなく為替レートの上乗せ幅を含めた「総コスト」で比較する、(3)受取側の方法(銀行口座着金か、現金受取か)と着金までの日数を確認する、という3点を押さえておけば大きな失敗は避けられる。

今後の展望

ベトナムの提案は、東南アジア全体で進む送金インフラの近代化という大きな潮流の一部である。域内では中央銀行間でQRコード決済の相互接続や即時決済網の連携が進められており、国境をまたぐ少額送金のコストと時間は中期的に低下していく公算が大きい。日本の送金事業者にとっては、対ベトナム送金の需要を取り込むうえで、現地金融機関や現地で口座を持つ外国金融機関との提携戦略が競争力を左右することになる。

利用者の側から見れば、選択肢が増えるほど「どのサービスをどう選ぶか」の比較が重要になる。制度は提案から施行までに修正されることも多いため、最終的な規制内容を確認したうえで、総コスト・速度・受取方法のバランスでサービスを選びたい。

よくある質問

Q1: この規制緩和はいつから適用されますか?

A1: 現時点では提案段階であり、正式な施行時期は確定していません。パブリックコメントや関係省庁間の調整を経て内容が修正される可能性もあるため、最終的な制度の公表を待つ必要があります。

Q2: 日本からのベトナム送金にはどんな影響がありますか?

A2: 外国金融機関がベトナム国内口座を送金経路に使えるようになれば、中継銀行を経由する段数が減り、手数料の低下や着金時間の短縮につながる可能性があります。日本で働くベトナム人労働者の母国送金や、ベトナムに拠点を持つ日本企業の資金管理にとっては好材料です。

Q3: 送金サービスを選ぶ際の注意点は?

A3: 金融庁に登録された資金移動業者または銀行を利用すること、送金手数料と為替レートの上乗せ分を合わせた総コストで比較すること、受取方法と着金日数を事前に確認することの3点が基本です。規制緩和が進むのと同時に、各国の最新の規制情報を確認し、自分の送金額・頻度に合ったサービスを選ぶことが重要です。