東北銀行 SBIレミットの国際送金サービス連携開始について
岩手県盛岡市に本店を置く地方銀行の東北銀行が、SBIグループの資金移動業者であるSBIレミットと、国際送金サービスに関する連携を開始した。地方銀行が自前で国際送金インフラを抱え込むのではなく、専業のフィンテック企業と組んで顧客に送金手段を案内するという、近年広がりつつある分業モデルの一例である。本稿では、この連携の位置づけを、国際送金のコスト構造や関連法制度とあわせて整理する。
連携の概要と背景
今回の連携は、東北銀行の顧客がSBIレミットの提供するオンライン完結型の国際送金サービスを利用しやすくする取り組みである。SBIレミットは、米国の送金大手マネーグラム(MoneyGram)の国際ネットワークなどを活用した個人向け海外送金を手がけてきた事業者で、銀行窓口を経由しない送金手段を提供してきた。
地方銀行にとって、外国送金業務はコルレス契約の維持、外為事務の人材確保、マネー・ローンダリング対策(AML)の高度化など固定費の重い分野である。一方で、外国人住民の母国送金や、海外と取引する中小企業の決済など、地域における国際送金の需要は着実に存在する。自行単独でフルラインの外為サービスを維持する代わりに、専業事業者との提携で需要に応える判断は、この構造を踏まえたものといえる。
地方銀行がフィンテック企業と組む理由
東北地方を含む地方圏では、人口減少と高齢化が進む一方、技能実習や特定技能などの在留資格で働く外国人住民が増え、母国への仕送り送金のニーズが高まっている。また、地場の製造業や食品関連の中小企業が海外販路を開拓する動きもあり、少額・高頻度の国際決済を低コストで行いたいという要望は地方でも強い。
こうした需要に対し、銀行が勘定系システムを改修して新サービスを内製するのは時間もコストもかかる。金融庁は金融機関とフィンテック企業の連携やオープンAPIの活用を継続的に促しており、銀行が口座・顧客接点を持ち、フィンテック企業が送金実行の機能を担うという役割分担は、規制当局の方向性とも整合的である。今回の連携は、その地方銀行版の実装例と位置づけられる。
国際送金のコスト構造とSWIFT送金との違い
銀行窓口からの伝統的な外国送金は、SWIFTのメッセージングネットワークとコルレス銀行(中継銀行)の連鎖を経由する。このため、送金銀行の手数料に加えて、中継銀行手数料、受取銀行手数料、さらに為替レートに上乗せされるスプレッドが重なり、利用者が最終的に負担する総コストは見えにくくなりがちである。着金までに数営業日を要することも珍しくない。
これに対し、SBIレミットのような資金移動業者や、ミッドマーケットレート(実勢為替レート)を用いて手数料を明示するWiseなどの海外送金サービスは、自社で構築した送金ネットワークや提携網を使うことで、中継コストを圧縮し、料金体系を単純化している。世界銀行の送金価格データベース(Remittance Prices Worldwide)によれば、世界の個人送金の平均コストは長らく送金額の6%前後と高止まりしており、国連のSDGsは2030年までに3%未満へ引き下げる目標を掲げている。低コストな送金チャネルへの接続は、この世界的な課題への対応でもある。
利用者がサービスを比較する際は、表示上の送金手数料だけでなく、適用為替レートと実勢レートの差、受取側で差し引かれる費用、着金までの所要時間を合計した「総コスト」で見ることが重要である。
資金移動業と関連法制度
銀行以外の事業者が為替取引(送金)を業として行えるようになったのは、2010年に施行された資金決済法によって資金移動業の制度が設けられたためである。資金移動業者は金融庁の登録を受け、利用者から預かった資金について供託等による保全義務を負う。その後の法改正により、取扱可能な送金額に応じた類型が整備され、事業者は業務の性質に応じた規律の下でサービスを提供している。
また、国際送金には犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認(本人確認)が必須であり、外為法(外国為替及び外国貿易法)上、一定の対外取引には財務省への報告義務が課される。銀行とフィンテック企業が連携する場合でも、どちらの主体がどの確認義務・報告義務を担うのかという責任分界の設計が、サービスの信頼性を左右する。
今後の展望と残る課題
地方銀行が外為業務の一部を専業事業者との提携で代替する動きは、今後ほかの地域金融機関にも広がる可能性が高い。銀行側は店舗網と地域での信頼という顧客接点を、フィンテック側は低コストの送金実行機能を持ち寄る構図であり、双方にとって補完関係が成り立ちやすいからである。
一方で課題も残る。第一に、システム連携や顧客導線の設計を誤ると、障害発生時の責任の所在が不明確になる。第二に、顧客情報の共有範囲と管理責任を、個人情報保護法制に沿って明確にする必要がある。第三に、AML・制裁対応の水準を提携先と揃えなければ、銀行本体のレピュテーションリスクに直結する。利用者の側も、提携サービスを使う際は、運営主体がどこか、トラブル時の問い合わせ窓口がどこになるかを確認しておきたい。
まとめ
東北銀行とSBIレミットの連携は、地方銀行が単独では維持コストの重い国際送金分野で、フィンテック企業の機能を取り込む分業モデルの実例である。世界的に送金コストの引き下げが政策課題となるなか、地域の利用者が低コストかつオンライン完結の送金手段にアクセスしやすくなる意義は小さくない。今後は、責任分界や情報管理といった運営面の設計が適切に行われるか、そして同様の提携が他の地域金融機関へ広がるかが注目点となる。手数料や対応通貨などの具体的な条件は変動しうるため、利用にあたっては各社の公式サイトで最新情報を確認してほしい。