日本発eKYC技術がグローバル送金市場を変える―ELEMENTS×Remitly提携の深層
株式会社ELEMENTSが、アメリカを拠点とする海外送金大手Remitlyに対し、オンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」の提供を開始しました。国際送金業界では、マネーロンダリング対策規制の強化により本人確認プロセスの厳格化が進む一方、ユーザー体験の悪化が顧客離れを招くという矛盾に直面しています。今回の提携は、日本発の技術がこの課題をどう解決するかを示す重要な事例となります。
参考: ELEMENTS、Remitlyにオンライン本人確認サービスを提供開始(PR TIMES)
分析・見解
本人確認にかかる時間を平均90秒に短縮
Remitlyが日本のスタートアップELEMENTSを選んだ理由の一つは、処理速度です。LIQUID eKYCは、身分証の撮影から顔認証までを平均90秒で完了させます。業界平均は3分から5分かかるとされ、この差は圧倒的です。国際送金では初めて利用する人ほど、本人確認の途中で離脱してしまう傾向があります。ある調査では、離脱するユーザーが全体の約40%に達するとされています。
アジア圏の身分証に強い偽造検知の精度
二つ目の理由は、偽造検知の精度です。ELEMENTSは独自のディープラーニング(=深層学習)モデルを採用しており、アジア圏特有の身分証様式を見分ける精度が99.7%に達します。欧米系サービスの精度は95%台にとどまっており、大きく上回っています。Remitlyの主力送金先はフィリピンやベトナムであり、この技術的な相性の良さが提携の決め手になったとみられます。
既存システムに組み込みやすいAPI連携
三つ目の理由は、API(=外部サービスと連携するための仕組み)連携の柔軟性です。既存の送金プラットフォームに最小限の改修で組み込める設計は、世界規模でサービスを展開する企業にとって、導入コストと導入スピードの両面で魅力的です。
輸出競争力を持つ日本発eKYCの技術力
さらに重要なのは、今回の提携が日本のeKYC市場の成熟度を示している点です。デジタル庁が進めるトラストサービス基盤の整備により、2024年以降、日本は本人確認の精度と法令遵守の両立で国際的な評価を得てきました。今回の事例は、その技術が海外でも通用する輸出競争力を持つことを証明しています。
ビジネスへの影響
本人確認の時間短縮が新規獲得コストを下げる
国際送金や越境ECを手がける企業にとって、この事例は投資対効果の面で参考になります。本人確認の所要時間を半分にするだけで、新規ユーザーの獲得コストが30%削減されたという他社の事例もあります。RemitlyとELEMENTSの成果は、今後のベンチマーク(=比較の基準)となるでしょう。
規制対応を信頼のブランド価値に変える発想
もう一つの示唆は、コンプライアンス(=法令遵守)を競争優位に変える戦略です。規制対応を「コスト」と捉えるのではなく、高精度な本人確認を「信頼の証」としてブランド価値に組み込む発想が求められます。個人情報保護規制が厳しくなっている欧州や北米の市場では、日本発の高品質なeKYCが差別化の要素になります。実務では、eKYCベンダーを選ぶ際に処理速度・偽造検知率・API柔軟性の三つの指標を明確に比較評価することが欠かせません。